昨年(2020年)は4月7日から5月6日までの1カ月間、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県に初めての緊急事態宣言が発出された。さらに4月16日には同程度に蔓延が進んでいる北海道、茨城、石川、岐阜、愛知、京都を緊急事態措置を実施すべき区域に加え、国民が一丸となって大型連休期間も含め感染拡大防止に取り組む必要から、すべての都道府県(全国)を対象に5月6日まで緊急事態宣言が発出された。
この緊急事態宣言という前代未聞、未知の経験に業界では、宣言解除後初めて迎えるギフトの主要イベント「中元」に関して、「予測がまったくつかない」「消費者心理が読めない」と戸惑いが走った。ところが蓋を開けてみると、悪くても前年対比数パーセントダウン程度の落ち込みか同じ売上げを維持、なかには昨対を上回る成績の販売店や問屋がかなりあったのである。
コロナ以前の中元は、「暑中ハガキを出さない人が増えてきている」と同様に漸減市場と目されてきた。しかし、「中元という伝統的な習慣がコロナで盛り上がったのは意外だった」との見方に代表されるように、消費者は中元を贈る行為をコロナ禍で〝無事を尋ねる(伝える)”メッセージとして積極的に活用したのである。
願わくは三越伊勢丹が編み出したと言われる、帰省しない代わりに贈る「帰省暮」のような造語がこの中元に引っ掛けられないだろうか。関係者のコピー力と発信力に期待したい。帰省暮は単なる歳暮の代替需要だけでなく、新しい市場(習慣)を喚起しているからだ。
続きは2021年6月号(5/15発行)掲載