香港のクリエイティブ産業は今、二つの大きな潮流によって牽引されている。一つは、古き良き街並みへの愛着を表現する「レトロ・ポップ」であり、もう一つは、香港出身のデザイナーが生み出し世界を席巻するキャラクター「ラブブ(LABUBU)」に代表される、普遍的アートトイの潮流。ラブブの異例なまでの成功は、従来の香港雑貨が依拠してきた文化的背景から脱却し、デザインがグローバルIP(知的財産)として機能し始めた新しいフェーズを示している。
「レトロ・ポップ」は、急速な都市開発の中で失われゆく香港独自の文化や風景を、ユーモアとモダンなセンスで再解釈し、商品として「記憶を留める」試みである。国内でのレトロブームに加え、九龍城砦を彷彿とさせる架空の街を舞台にした漫画『九龍ジェネリックロマンス』がアニメや映画にメディアミックス展開するなど、九龍城砦を知らない世代にもその世界観が受けているという。
2025年12月号(11/15発行)掲載