白壁の街並みが人気の観光地「倉敷美観地区」のなかでも、圧巻の存在感を誇るのが、「大原美術館」である。倉敷紡績など数多くの事業で名を成した実業家、大原孫三郎氏によって日本初の西洋美術を展示する美術館として誕生。
以来地元に愛される美術館として、子供対象のプログラムや若手芸術家の支援、企業や組織との様々な包括連携を通して「アートのもつ力」を発信し続けている。
6年後には100周年を迎えるという大原美術館の「今とこれから」、また美術館ならではの商品開発について事業部部長の藤田文香さんとマーケティング課の林真弓さんにお話を伺った。
コロナ禍を経て
かつて戦時中であっても絵を見に来る人には門戸を開き続けたという大原美術館。しかしコロナ禍にあっては、4か月間の休業を余儀なくされた。「日本博物館協会」のガイドラインに沿ってオペレーションを作り、自宅待機する社員や、出勤して今後のオペレーションのミーティングを重ねる社員など、今できることに集中した期間だった。既に運用していたオンラインショッピングもこの時期にサイトを増やし、拡充した。
改めてコロナ禍を過ぎて、オペレーションがもの凄く変化したかというと、実はそれはなかったと藤田さんは言う。設備的に新しい施設なら簡単に出来ることも、大原美術館のように長い時間の経過のなかでものを考える施設では、先を見越した上で今これを取り入れるべきか、またこの先やり替えないといけないのでは、と熟慮に熟慮を重ねる必要があったのだ。
2024年12月号(11/15発行)掲載