日本文化の粋を集め、数々の歴史の舞台となってきた日本の料亭。なかでも創業195年を迎える大阪北浜「花外楼」は大阪を代表する名料亭だ。花外楼の名が広く知られるきっかけになったのが、今から150年前の「大阪会議」。大久保利通、木戸孝允、板垣退助、伊藤博文といったキーマンが立憲政治の礎となる会議を行った舞台。木戸孝允が会議の成功を祝って「花外楼」と名付けたことから始まる。
女将の徳光正子さんは、花外楼初代から数えて五代目にあたる。創業の地、北浜にこだわり、信用という暖簾をつなぐ徳光さんに花外楼が「守り続けたもの」「時代とともに変えてきたこと」についてお話しを伺った。
あえて北浜にこだわる
「船場の北の浜側」であることから「北浜」と呼ばれ、かつて流通、経済の中心地として栄えた船場。商いをする上で最も重んじたのが「信用」である。自らの徳を高め、正しく商売をする。そのシンボルとなったのが各々の店の「暖簾」だとお話しになる。
船場商人の心得に「奉公=きちんとした社会のルールを守る、分限=身の程を知る、体面=信用を落とすようなことをしない」があるという。いま時代はどんどん変わっているが、逆にコンプライアンスに厳しい時代だからこそ、この心得の重みを感じる。
2026年1月号(12/15発行)掲載