講演/アートとカレンダー ミュシャと12の月展に寄せて

「ミュシャ」カレンダーの大衆化に大きな役割果たす

中牧弘允 氏 吹田市立博物館特別館長、(一社)日本カレンダー暦文化振興協会理事長

 

東西の美しいカレンダー

カレンダーとアートの織りなす世界とはなんでしょうか。ふつうカレンダーといえば年月日、曜日、二十四節気、その日の吉凶を表す暦注などを文字や数字で示す無味乾燥で愛想のないものです。しかし、そこに絵心が加えられると、鑑賞の世界へと変貌します。私もその魅力にとりつかれた一人ですが、本日の講演では古今東西のカレンダー、なかでも美的鑑賞に耐えるカレンダーについて紹介していきます。

まずは、「ネブラ・スカイディスク」を取り上げます。ドイツのネブラという村で発見された一種の携帯用の暦で、ザクセン・アンハルト州立先史博物館に所蔵されています。これは、1999年に盗掘されたものを奪還しようと、のちに同館館長となるメラーさんがスイスでおとり捜査を仕掛けて取り返した、といういわく付きの展示品です。

BC1600年頃作られた青銅製で、直径約30㎝、そして金箔を施した装飾的な造形物です。この天穹盤には夏至と冬至の日の出と日の入りの角度が造形されており、この盤を持って、地平線や山の稜線に昇ったり沈んだりする太陽を観察すると、今がどのくらいの時節にあるかがわかるというすぐれものでした。

一種のホライズン・カレンダーといえます。これは、太陽暦に相当するものですが、三日月と満月も描かれていて、近くにななつ星(スバル)があります。スバルは季節を感じることのできる星座でした。下部の円弧はあとから加えられたものですが、夜間に航行する「太陽の船」であり、宗教的な意味合いがあるとメラーさんは解説しています。このポータブル・ディスクを持ち歩くだけで太陽暦と太陰暦が一部ではあれ両方わかるカレンダーになっていました。

 

続きは2021年7月号(6/15発行)掲載

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